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森の染物屋さん

なぜ、花は、 いろんな色で咲くことが、 出来るのでしょうか。

 

不思議ですよね~・・

 

一斉に草木が、花を付け、そのにぎやかなこと、見るものの心も浮き立ちます。

特に桜、

花さか爺さんのお話

そのものですよね~

枯れ木に、一斉に花が咲くなんて。

 

“花って・・偉大だな~・・”

な~んて、ぼんやり考えている 今日、この頃のムーさんでした。

 

 

ムーさんの住む土田舎にもごく一部の人のみが知る 桜の名所があります。

 

秘密の場所 というのではないのですが、 地域の人々だけが、お花見に集う場所でした。

 

桜は、 ソメイヨシノではなく、 大島桜などの山桜が中心でした。

 

華々しさはないのですが、山に霞が漂うように、咲きそろう姿は、ムーさんのお気に入りの 風景のひとつでした。

 

そろそろ日よりも良くなったある日。

 

ちょっと花見の下見でもと、森に出かけるムーさんの姿がありました。

 

もちろん、背負ったリュックには、

少々のお酒も忘れてはおりません。

 

一汗かいて、たどり着いた場所は、一面に黄色の絨毯が、敷き詰められておりました。

 

「お~・・今年も見事だ・・」

 

西洋タンポポに席巻されて久しい、タンポポの世界にあって、この日本タンポポの群生地は、貴重な場所と言っていいのでしょう。

 

足を踏み入れるのに、躊躇するほどです。

 

タンポポの明るさと、暖かさに誘われて、虫たちの羽音もにぎやかです。

ところが、「どれ」と見上げた桜の森は、打って変わって、堅い蕾に閉ざされ、寒々しています。

 

「あれ~・・どうしたことだ・・この時期・・一輪の花もないなんて・・」

 

そこだけ春に取り残されたような風景に、陽気な気分のムーさん・・すっかり意気消沈してしまいました。

 

 

満開のタンポポの絨毯、その上にどっかりと腰を下ろし、ため息とともにほろ苦い酒を飲む、ムーさんの姿がありました。

 ・

「あ~・・忙しい・・忙しい・・」

「もうすっかり遅くなっちまった・・」

「もたもたするな・・がんばれ・・」

「はて・・何事だろう・・」

 

声のする方へ・・

 

すると、森の中に、たくさんの旗が、パタ・パタ・パタ・・・

その旗には【森の染物屋】と、書かれていましたが、無地のままでした。

 

「染物屋の旗にしては、なんと色気のないこと・・」

 

店の中は、大忙し・・職人らしき人々が、ばたばたと飛び回っておりました。

 

「あの~・・あの~・・」

すまなそうに声をかけたムーさんに、誰も答えてくれませんでした。

 

「すいませ~ん・・」

 

「はっ・・は~い・・お~い・お客様だぞ・・」

 

「お客様・・すみません・・もうすこしで、仕上がりますので。」

 

「は~・・私は、何も注文して・・おりませんよ・・」

 

「いえいえ・・あなた様は、私どもの大切なお客様で・・

毎度ごひいきにしていただいているのに・・

いえね・・うちの職人が・・

あまりのタンポポのきれいさに見とれて・・

つい、職をおろそかにいたしましてね・・

大至急で、仕上げますので、

いましばらく、お待ちください。」

 

店の主人にぺこぺこと頭を下げられながら、

謝られたムーさん、

何のことかわからず 大いに恐縮してしまいました。

 

“きっと私を、注文主と勘違いしているのだな・・

申し訳ないことをしてしまったぞ・・”

 

「こちらにすでに、出来上がったものがありますので・・

見ていただけますか・・

今年は、大層良いできだと、自画自賛しておりますので。」

 

案内された裏庭には、染めあがったばかりの布が、

天幕のように、所狭しと干されておりました。

 

布が風になびいて薄桃色に輝くさまを、

うっとり眺めていたムーさんに、

 

「どうです・・見事なものでしょう・・

お客様・・お気に召されましたか・・」

 

「気に入るも何も・・私は注文なんか・・して・・」

と言いかけた、そのとき、

『親方・・すべて、仕上がりました。』

と、威勢のいい声が飛びました。

 

「お客様・・お待たせいたしました・・あなた様のご注文の品・・

すべて整わさせていただきました・・どうぞ、お納めください。」

の声とともに一陣の風が吹き抜けました。

 

すると、天幕のように干されていた布が、

一斉に、はためき・・・はためきの裾からちぎれて、

薄桃色の色ふぶきが、あたりを乱舞しはじめました。

ほのかに甘い香りに包まれたムーさん

身動きも取れないまま、身を任せておりました。

「わ~・・見事だこと・・ムーや・・ムーや・・

起きなさい・・今年も、見事な桜ですよ・・」

宴たけなわの花見の席で、

うっかり眠ってしまったようですね。

ム~さん!

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